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女のおれ、男の私2 

大城あゆみとはその後、接点を持たなかったが、彼女の父親がパンダイと業務提携を結んでいる会社の社長だったこともあり、噂は耳に入ってきた。
彼女は、やはり直樹が気づいた通り、実はかなり勉強が出来るようだ。成績を操作してクラスを渡り歩いていることくらい、造作もないらしく、狙ってテストの点を取っていたらしい。琴子を初めとするF組の連中が聞いたら、怒りそうなことだが、そうらしい。
だが、何故そうするのか両親にも分かりかねるところとか。
何か将来で思い悩んでいるのだろうと両親は高校までは自由にさせるつもりでいたが、彼女は進路希望には「フリーター」と書き、教師とも両親とも揉めたそうだ。
結局、彼女の祖母に当たる人物が説得したらしく、その祖母が理事長を務める文科系の女子短大に渋々進学することにしたそうだ。
それでも両親にしては不満らしく、大学を受けなおすか外国へ留学するよう1年かけて説得するのだとか。
ゆくゆくは社長になるか、あるいは社長に相応しい人物を婿に迎える為に。
自由に選ばせる振りをして、実はその選択肢しか与えられていないのは直樹も同じなので、彼女の心境は何となく理解できた。
理解出来たからと言って、興味がある人物ではない…寧ろ同族嫌悪しそうな人物のことなので、直樹はすぐに思考の外に追いやってしまった。
寧ろ、卒業式の後の謝恩会で腹が立ったとは言え、琴子にキスをしたことを思い出すことが多く、彼は自覚のない青春状態に陥っていたのだ。
そして、意外な場所で再会するまで忘れられることになる。



「あれ、入江じゃないか」
一人暮らしを始めたマンションのことは、知り合いに教えていない。
だから、マンションの入り口で声を掛けられたことは本当に意外だった。
「…大城」
直樹がその人物を認めると、彼女は短大が近所のため、入学時から一人暮らしをしているのだと教えてくれた。
「相原さん、元気?」
「何でおれに」
「お前が相原さんのこと、好きだからに決まってる」
あゆみの言葉に、直樹は不機嫌そうに目を細める。
確かに、紆余曲折を経て、何故か自分は琴子のことが好きになっていることを自覚している。
だが、それを他人の口から言われるのは、腹が立つ。
というか、高校時代しか知らないあゆみが何故、自分の気持ちを知っている。
顔に出たのか、「自覚なかったらしいな」と呆れ顔で言われた。
つまり、高校時代から彼女の目から見て自分は琴子のことが好きだったらしい。
「泣かせたりしてないだろうな」
「…相変わらず琴子に肩入れしているんだな」
皮肉を込めて言い放つと、あゆみは意外な言葉を返した。
「ああ。相原さんは、明るくて頑張り屋で、可愛い。
他人の為に一生懸命になれるし、何よりパワフルだ。
私とは違うから、高校の頃から憧れているよ。
入江には勿体無い」
言うに事欠いて琴子に憧れるとは物好きだと思ったが、その物好きは自分でもあったので、何も言わなかった。
琴子の本質を、あゆみは理解している。
なまじ出来るから、琴子のようにはなれない。
「だから、入江の理性の限界が来て、相原さんがどうこうされたらと思うと、不憫でならない」
「お前をどうこうするって選択肢はないんだ」
一般的に見れば、あゆみは美人の部類に入る。直樹並の長身の持ち主だが、顔もスタイルもいい。
思ってもないことを言うな、とあゆみは吐き捨てると、直樹を睨んだ。
「お前とどうこうなる訳がない。自分と似たような奴を好きになるなんてぞっとするね」
「それは奇遇だ。おれも同じだ」
同族嫌悪からか、お互いに冷笑を浮かべて、別れた。


で、次に会ったのは、よりにもよってな日だった。
大雪で琴子と一夜を過ごす羽目になったあの日である。
あゆみは、直樹同様買い物に来ていた。
何故か、あゆみの顔も直樹同様引きつっていた。
どうやら、彼女も会いたくない事情があったらしい。
深く聞くつもりもなかったので、会計が終わり次第、立ち去るつもりでいた。
「相原さん相手に理性ぶっ飛ばすなよ」
店を出る間際、ボソリと言われた。
これが自分用の買い物だとか琴子以外の女の選択肢とかそんなものはまるで考えていない。
「ご忠告どうも」
肯定するのも否定するのも腹が立つのでそう返し、絶対にならないと自信を持っていた数時間後、直樹は頭を抱えることになる。

「入江くん、だ~い好き」

安心しきった顔で眠る琴子が紡ぐ、甘い寝言。
図らずも一緒に寝ることになり、凄まじい寝相に呆れもしたが、琴子が寝返りを打つ度に髪が揺れ、自分と同じシャンプーとボディーソープの香りが鼻をくすぐる。時折こちらに触れてくる肢体は柔らかく、温かい。
いっそベッドから抜け出して、コートで再び寝ようと思ったが、身体が動かない。
寧ろ、琴子と距離を詰めそうな自分がいて、自制している状態だ。
なのに、こっちの気も知らないで、琴子は太平楽の眠りを貪っており、その寝相の悪さから琴子には大きいパジャマが乱れて、胸元が覗く。
理性は既に粉々だが、何とか粉々になったものをかき集めている状態だ。
いっそ感情に任せてしまった方が楽になれるのだろうかと思ったが、母紀子の言いなりになるのはまっぴらごめんだ。断じて避けたい。

「…入江くんがいれば、あたし、なんにもいらない…」

そう思っている傍から、この寝言だ。
まったくもって琴子の破壊力は恐ろしい。

結局、直樹は熟睡など出来ず、ようやく明け方浅い眠りについた。
眠りに落ちる間際、同族の忠告を思い出し、それが実に的確だったことに対し、不愉快な気分になったことは言うまでもなかった。
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