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女のおれ、男の私2.5 

琴子がその人物と出会ったのは、直樹が沙穂子とのお見合いを進め始めた夏だった。
理美もじんこもデートなのか家にいないようだし、かと言って今日はバイトもない。
家にいる用事はないが、直樹と顔を合わせたくなくて、公園のベンチに座ってぼんやりとしていた。
「隣、いい?」
声をかけられ、見上げると、見知らぬ人間が立っていた。
直樹並の長身に、短くしたこげ茶の髪、整った顔をした女性(声は低かったが、服装が女性のものだったので、琴子はそう判断した)だが、琴子は何となく、シャープな印象がある目元が直樹に似ていると思った。そこでまた、直樹を忘れられない自分に泣きそうな嫌悪を覚える。
琴子が黙っていると、女性は隣に座った。無造作な座り方だったが、それはまるで直樹のように絵になった。
「何か悩み、あるの?」
「え?」
「そういう顔をしているよ」
琴子が驚いて女性の顔を見つめると、女性は静かに微笑んだ。
「話したくないなら話さなくてもいいけど、近しくないからこそ話せるものもあるでしょ?壁に話していると思って話してみてくれないかな」
それはそうかもしれない。
直樹を知らない人間の方が客観的に物事を見てくれるだろう。
バッサリ切り捨ててくれればいい。
琴子はそう思いながら、ぽつり、ぽつりと話した。
女性は、黙って話を聞いてくれた。
話し終えた時には、琴子は泣いていた。
ああ、やはり今の自分には辛すぎる話だ。
「私と逆だな」
ぽつり、と呟かれた言葉に琴子は顔を上げた。
「私は、好きな人から諦められるかもしれないんだ」
「どうして?」
女性は悲しそうに笑った。
「私も、家の事情でお見合いをして、好きな人ではない人と結婚の話を進めているから。
私が好きな人は、私の為に怒ったり泣いたり笑ったりして、いつも一生懸命。
大雪の中、何時間でも私を待つっていうのは、ちょっと勘弁してほしいけど、私の為なら何でもしそうな人。
私を変えてくれた掛け替えのない人で、私を理解してくれる人。
どんなに冷たくしても、私を好きでいてくれる人。
けど、今回ばかりは諦められるかもしれない。
結婚となれば、今までとは違ってくるだろうから」
「あなたは、諦められるの?」
琴子は泣きながら、女性を見つめた。
女性は悲しそうな笑みを深めた。
「私は多分、諦める振りをするのかな。
完全に忘れるのは、無理だから」
琴子は自分のことを忘れて、叫ぶように言っていた。
「おかしいよ!そんなの。好きなのに…好きなのに…」
一方通行ではないのに、家の事情で諦めるなんて。
仕方ないことなのかもしれないけど、琴子には納得出来ない。
琴子の勢いに驚いた女性だったが、先程とは違った嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ありがとう、相原さん。私の為に泣いてくれて。
入江も馬鹿だな、こんなに可愛い相原さんを泣かせるなんてさ」
今度は琴子が驚く番だった。
何故、知っているのだろう。
名乗らなかったし、直樹の名を一度も出さなかった。
それは、どうして?
「斗南高にいたんだ、私。同じ学年で、あなたのこともよく知ってる。
私はあなたが羨ましいと思ってた。
あなたは、私にはないものを持っているから。
周囲は身の程知らずって言ってたけど、私は応援してたんだ。
たまたま沈んだあなたを見かけたから声をかけたけど、逆に私が励まされてしまったね。
このお礼は、いつか必ずするから」
女性は琴子にハンカチを渡すと、そのまま立ち去っていった。


ハンカチは女性にしては飾り気のない大き目のもので、それはどこか直樹を思い出させた。
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