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男の私、女のおれ3 

琴子から事情は聞いていたが、実際目にすると複雑だった。
西とのデートで入ったレストラン、後から直樹が沙穂子をエスコートして現れたのだ。
(パンダイも状況は同じと見える)
結婚を使い、危機的な状況を乗り切らなければならない程。
「いかがなさいましたか?」
「…高校時代の同級生が母の友人の娘さんとおりましたもので…」
西の言葉に我に返り、あゆみは微笑んで応じた。
彼も気づいていたのだろう、ちらりとその方向を見た。
「パンダイの社長代理と北英の大泉会長の孫娘さんですね。
僕も何度か仕事でお会いしております」
武西百貨店の営業本部長の西は、穏やかな笑顔の印象が強いが、決して愚鈍な人間ではない。寧ろグループの会長の孫とは言え、その年齢で営業本部長まで登りつめた頭脳は明晰と言っても良い。また、職業柄なのか、人を察するのが巧い。自分の動揺は、恐らく悟られた。
(そして、何故私が奴と見合いをしなかった理由を疑問に思うはずだ)
業務提携をしている会社の社長代理が高校の同級生、お互い友人ではないにしろ面識もある。それは願ってもない好条件だろう。だが、お互いに違う相手と見合いをしている。共倒れの危険性があったにせよ、互いに違うグループの者と見合いをするのは、得策ではないと言われても仕方がない。
(気づかれてはならない)
自分の想いも直樹の想いも。
篤志を泣かせて進んでいる自分には、直樹の決断が分かる。自問自答しながらも、それを想いごと封じ、この危機を乗り越える必要があるのだと。自分の想いという犠牲だけで十分だと。
当たり障りのないクラシック音楽の話をしながら、それでもあゆみは思う。
(自分に似た奴が自分と似た行動をするのが、こんなに堪えるとはな)



それは、本当に正しいことなのか?



恐らく、彼が抱き、奥底に閉じ込めている問いは自分にも響いている。
「それでは、そろそろ行きましょう。よい夜景の場所があるんですよ」
「…ええ、楽しみです」
西にエスコートされ、あゆみは立つ。
ふと、直樹の視線に気づいた。
その視線の色にあゆみは気づく。


─お互い様─


お前が私を責められないように、私もお前を責められない。
会社の為の結婚に続く道を歩いている。
私も、お前も。


だが、この時、西がその様子を視線の端に収めていたことを、あゆみは気づかなかった。
このやり取りが、後に大きく左右するということもあゆみも、そして直樹も気づかなかった。
全てが明らかになるのは、素直になった後のこと。





夜景を西と見て、彼の車で送ってもらう頃には、時計は12時近くになっていた。
必ず日が変わるまでには帰す、というのがいかにも紳士的な西らしいとあゆみは思う。
家に着くと、いつもと違うことに気づいた。
この結婚には賛成の両親が玄関前にいたのだ。だが、自分達を出迎えている様子ではないと言うことは、その顔色を見れば一目瞭然だ。
「何かあったの?」
嫌な予感がして、両親に尋ねると、母がこう言った。
「篤志くんが帰って来てないの…」
「え?」
あゆみは目を見開く。
篤志とは、ここの所、篤志がやはり塞ぎこんでいるからか、顔を合わせていなかった。
まさか、そこまで思い詰めていたのか。
「心配ですね。警察には?」
「今から届けようかと…」
西と父の会話など耳に入っていなかった。
あゆみは、身を翻していた。
「あゆみ?!」
背中に飛んできた声など綺麗に無視して、あゆみは走った。


馬鹿野郎、篤志。
お前、そんなに思い詰めて…。
本当に私が好きな奴だ、お前は。


なのに、お前は……



私に心配ばかりかけさせる……!!



帰りたくなくてどこかに独りでいるのだろうが、事件や事故に遭ったかもしれない。
そう思うと、指先がどれだけ凍えるか、お前は分かってない。
私が、今どれだけお前の無事に安心したいか、お前は分かってない。


「どこだ!!篤志!!」


あゆみは、夜の住宅街で叫んだ。
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