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男の私、女のおれ6 

注意:この回はほぼオリキャラで進行しており、イタキスキャラ出演はほとんどありません。
   苦手な方は、閲覧には十分お気をつけ下さい。
あの夜以降、あゆみが篤志と顔を合わせることはなかった。
家には帰ってきているようだが、あゆみと顔を合わせないように徹底しているらしい。
結婚をするあゆみを諦めるためだろうと両親は特に気にしていないようだが、あゆみは気にする。
自分の前で、あの明るい笑顔を見せろとは言わないが、姿を見せてほしかった。
もう少しで、別離となってしまうのだから。
「私も大概だな」
あゆみは仕事の手を止め、自嘲の笑みを浮かべる。
西からは指輪も贈られていない状態だが、結婚を前提とした付き合いはしているのだし、両親は早く結婚するよう暗に勧めている。西側は、再婚という事情のみで会社絡みのものはない。急ぐ理由はないのだから、こちらとは温度差がある。
それに、西は恐らく自分の気持ちがどこにあるか気づいている。西から、あの夜のことを触れてくることはないし、表情から察することは出来ないが、愚鈍ではないということは付き合っていれば分かる。
篤志の気持ちに気づき、気遣った西が自分もまた同じであると知ったら、どのような選択をするか、あゆみには分からない。
だが、結婚は成功させなくてはならない。
何らかの手を打たなければと思うが…。
そこまで思考したその時だ、内線が鳴った。受付からだ。
「武西百貨店営業本部長の西様がお見えです」
「通して下さい」
今日は何の約束もなかった筈だ。
あゆみは、あの夜のことを聞かれるかもしれないと思い、一つの覚悟を決め、応接室へ足を運んだ。
先に通されていた西は、あゆみが入ってくると、穏やかに微笑んだ。
その微笑みのまま、告げられた言葉にあゆみは絶句する。
「破談…ですか?」
「ええ。破談です」
西はあゆみの言葉に穏やかに頷いた。
「僕から申し入れなければ、あなたは言うことが出来ないでしょう?
あなたのご両親は、あなたの結婚が会社の為であることを強く望まれているようですから。
でも、僕はそんなことあってはいけないと思いますから。
篤志くんを泣かせてはいけませんよ、あゆみさん。
彼が好きなんでしょう?」
やはり、気づかれていたか。
だが、破談に至るまでが早すぎる。
あの夜から、さほど時間は経っていないのだ。
「僕は、亡くなった妻とはお見合い結婚の間際に周囲の反対を押し切り、学生時代に恋愛結婚をしたんですよ。
妻は、事故で残念ながら亡くなってしまいましたが…妻は僕に愛することの素晴らしさを教えてくれました。
その僕が、今のあなたをこれ以上拘束する訳にはいきません」
「ですが…」
「あなたの事情は、理解しています。祖父には出来る限りの力添えをしていただくよう、僕から申し上げます。だから、自由になってください」
西の微笑みに、あゆみは泣きそうになった。
婚約者として、完璧な男性だった。
欠点など何一つなく、篤志と出会っていなければ、彼を愛しただろう。
いや、好きな相手が篤志でなければ、きちんと整理をつけ、彼を愛するようになっただろう。
「…ごめんなさい…」
あゆみの声は、涙に揺れた。
気持ちを残したまま見合いをし、西に迷惑をかけた。
会社のことばかり考えて、西のことを考えていなかった。
西は、自分の事情にまで考えを及ばせてくれていたのに。
だから、西は自分との縁談を進めてくれていたのに。
「あなたは、優しい人ですね。
だから、パンダイの社長代理を選ばず、僕を選ぼうとしたのでしょうね。
でも、もう、大丈夫ですから。
少なくとも僕は、あなたの味方です。
後は僕に任せて、今は篤志くんの所へ行ってあげてください」
その言葉に押されるように、あゆみは応接間を飛び出した。


入れ替わるように、西に挨拶に来たあゆみの両親がやってくる。
飛び出したあゆみに目を丸くしていたが、残っていた西は穏やかに微笑んだ。
「あゆみさんとの縁談は、破談とさせてください。
そのことを、伝えました」
唐突な言葉にあゆみの両親もまた、絶句する。
「僕の一番上の娘、来年中学生なんですよ。
彼女が母親になるには、若すぎます。
援助につきましては、この度、御社にご迷惑をおかけしたお詫びとして、武西グループからするよう祖父に申し上げておきますが、彼女をどうかお責めになりませんように」
会釈をし、西は応接室を出た。
自分が取り成せば、ある程度援助は見込める。
その援助で立て直しをすれば、あゆみの結婚をカードに使う必要もなくなるだろう。
今日、出会った二人の顔を思い出す。
しかし、性別の違いはあれど、似ている二人だ。
不器用すぎる。
「僕はまだ、君を忘れられそうにないね、亜由美」
西は、亡き妻にそっと語りかけた。


あゆみは会社を出ると、タクシーを捉まえ、乗り込んだ。
行き先を告げると、タクシーは目的の場所を目指す。
考えなければならないことは、山ほどある。
破談になったのだ、両親は黙っていない。
それに、破談になったからといって、賛成されるとは思えない。
だが、それでも。



今、篤志には、伝えなければならない。



これは、西がくれた、最後の贈り物だから。
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