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男の私、女のおれ7 

タクシーで会社に戻ると、事態が飲み込めていない篤志を引き摺るように手を引っ張り、目的地を目指した。
西を信じ、自分は素直な気持ちで行動しなければならない。
社長室をノックもせずに開けると、やはり破談になったことを相談しあう両親の姿があった。
「あゆみ?」
不審を問う両親の声を無視しつつ、あゆみは篤志を引き連れ、両親の前に立ち、こう言った。
「悪いけど、私の婿は篤志に決めたから」
両親どころか、篤志の時間まで停まった。
「篤志が結婚できる年齢になったら、結婚する。
悪いけど、会社の為の結婚をしても無理。
篤志以外考える気はないし、離婚沙汰で問題を起こしたら、会社に再起不能のダメージを与えることになるから」
硬直したままの両親を無視して、篤志を引き摺ってあゆみは社長室を辞した。
仕事を放ってきてしまったので、最低限の指示を与えると、あゆみは早退することにした。
「いいの?先輩。今、会社大変なんだから、仕事した方が…」
「無粋なことを言うな。今日はもう終わりにしておきたい」
握る手を少し強めてやると、篤志は手を繋いでいる事実に気づき、顔を赤らめた。
まだ夢の中にいるとでも思っているのだろうか。
「お前にはまいったと言っているんだ、少しは嬉しそうな顔をしてくれるとありがたいんだが」
「え、あ、でも…」
「私が篤志を好きなのは不服かな?」
「それはないよ!」
篤志の必死な叫びにくすくす笑いを漏らしていると、後ろから控えめな靴音が響いた。
「あゆみさん?」
意外だが、会いたい人物ではあったその声にあゆみは手を繋いだまま振り返る。
やはりそこには沙穂子がいた。
「沙穂子さん……今日はどうかしたの?」
「ええ、今日は祖父の使いで社長に……」
そう沙穂子は笑うが、笑みはどこか精彩がない。
少なくとも結婚を前にした女性のする笑みではない。
「沙穂子さん、元気ないけど、どうかしたの?話、順調だって聞いたけど」
その理由は知っているが、それを出さずにあゆみは尋ねた。
沙穂子はその笑みを一際曇らせた。
「ええ、順調です。結納の日取りをお伺いしている所です。
でも…私、少し不安で……」
「不安?」
「あ、何でもないんです。忘れて下さい」
沙穂子は取り繕うように笑った。
そして、ふと、あゆみと篤志が手を繋いでいる所を見、一瞬の空白を見せる。
「そうだったんですか。お幸せに」
ひどく痛々しい微笑を浮かべ、会釈すると沙穂子は立ち去った。
あゆみは、直感した。



このまま彼らの結婚を進めても、誰も幸せにならない。



直樹が押し込めようとしているもの、沙穂子はもう既に気づいている。
気づいているのに、直樹に恋するがゆえに無視し、結婚しようとしている。
だが、直樹は沙穂子が気づいたことを察しないほど愚鈍ではない。
もう琴子への気持ちがないように振舞うだろうが、沙穂子はそこまで愚かな女ではない。
また、琴子が離れる事実がどういう結果をもたらすか、直樹自身も気づいていない。
確実な軋轢を生み、誰も幸せにはならない。



この結婚は、成立させては駄目だ。



あゆみは、気遣うように見つめる篤志に気づき、微笑んだ。
「さて、今日は家に帰って、私に考える場所を提供させてくれ。
お前と似た子が、今も泣いている。
助けてあげたいんだ」
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