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女のおれ、男の私8 

家に帰ったが、まだ琴子は帰ってきていないようだった。
(まだ、金之助の所か)
心の中でつぶやくと、部屋に荷物を置くと、再び玄関へ向かった。
大振りの傘を手にすると、そのまま家を出る。
今日の降水確率は高い、空模様からしても雨は降るだろう。
琴子の傘はあったから、忘れて行ったのだと推察するのは、難しいことではなかった。
(馬鹿な奴)
濡れて帰って風邪を引くつもりか。
琴子の傘に手を伸ばし、引っ込める。


傘は、一つでいい。


直樹は自分の傘だけ持って家を再び出た。
一本道の駅に着く頃には雨が降り始めており、直樹は改札口から少し離れた場所で足を止めた。
待っていれば、琴子は改札口を出て、こちらへ歩いてくるだろう。
何本の電車が駅に着いては出て行ったが、琴子はまだ改札口を出てこない。
雨は徐々に大降りになってきており、深まった秋では寒ささえ感じた。
だが、それでも琴子を待ち続けるつもりだ。


琴子に、逢いたい。


らしくないと自分でも思う。
こんなことを考え、琴子を待ち続ける自分は本当にらしくない。
だが、琴子以外の為にはしたいとも思わないだろう。
自分の選んだ答えに間違いはないと思っていた。
用意した答えを選んだ方が今も正しいと理性は言っている。
だが、琴子の傍に自分以外の男が立つことが許せない。
あいつの笑顔も涙もうるさい位の「好き」も…全部、おれのもの。





用意した答えの先で、おれ以外を好きになるのなら、選んではいけない答えでお前を離さない。





どの位待っただろうか、見覚えのある姿が改札口を出てきた。
やはり傘は持っていないが、家に電話する素振りも見せずにこちらへ歩いてくる。
(馬鹿か、あいつ。風邪を引くつもりか?)
と、雨に濡れるのを何とも思っていない様子の琴子の目に雨粒とは違うものが流れ落ちていることに気づく。
琴子は、泣いているようだった。


「よお」


歩いてきた琴子が自分に気づくのを待って、直樹は琴子に声をかけた。
琴子が驚きに目を瞬かせている。
そうだろうな、と思う。
今まで琴子にこんなことをしたことはなかったから。
促がして傘の下に入れると、琴子は明らかな緊張の色を見せた。
ずっと自分を見てきた琴子には、普段と違うペースであることに気づいたのだろう。
歩調を合わせて歩いていることにも戸惑いを見せているようだ。
構わず、直樹は切り出した。
「あいつと会ってたのか」
問われた意味が分からない琴子に更に問いを重ねると、琴子は金之助と会っていたことを認めた。
だが、そう問われて戸惑っている様子が気に入らない。


おれが、お前を気にしておかしいのか。
お前、おれのことが好きなんじゃないのか。


苛立ちのままプロポーズのことを口にすると、琴子は繕っていたが、動揺した様子を見せた。
「何て答えたんだよ」
琴子の動揺が気に入らなくて咎めるような声になっていたと自分でも思う。
それだけ感情的になっているのだろう。
分からない琴子に「入江くんには関係じゃない」と言われても仕方ないことだと思っている。
琴子が夢見るようなことなど、何一つやってやらなかったから。
「あ、あたし、家出るね」
黙り込んだ直樹に今度は琴子が切り出してきた。
結婚の邪魔になるだろうと父重雄と二人で決めたと琴子は言う。
やはり家を出る算段をつけていたらしい。
最後まで自分の枷にならないようにと。
「あたし、金ちゃんと結婚する」
震えた声で琴子はそう続ける。
それが一番正しいことであるかのように話しているが、直樹は半分も耳に入っていなかった。
そんなことはどうでもいい、そんなことよりも確かめたいことがある。
「あいつのこと、好きなのか」
琴子の肩がびくりと震えた。
その肩の動きだけで直樹は琴子の心が自分から少しも離れていないことを確信した。
琴子が、何て答えを返したのかも想像がついた。
けれど、琴子は金之助を好きだと言う。
そんな動揺した様子で言っても、嘘だと見破られること位、分かっている筈だ。
なのに、何故。


何故、おれを好きだと言わない。


「ふんっ。おまえは好きっていわれたら、好きになるのか」
直樹は苛立ちをそのまま琴子にぶつけていた。
だが、それは琴子の感情も爆発させた。
「な、なによ!悪いっ?!」
その言葉をきっかけに琴子は泣き叫んだ。
それまで直樹に隠していた激情をそのまま叩きつける。
だが、それでも琴子は自分を好きだと言わない。
沙穂子との結婚だけを考えていればいいと言った瞬間、直樹の中で何かが切れた。


今話しているのは、琴子の気持ちであって、沙穂子さんのことじゃないだろう。
どうして聞いているのか、何故、分からない。


何故、おれを好きだとその口で言わない。


感情のまま平手で琴子の頬を打つ。
更に激昂した琴子にそれ以上の感情を叩きつける。
「おまえは、おれが好きなんだよ!!」
琴子がぴたりと止んだ。
もう一度言ってやる。
「おれ以外好きになれないんだよ」
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