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男の私、女のおれ 

沙穂子さんは、入江に恋するが故にその不安を閉じ込め、入江を解放することはないだろう。
だが、その先に幸せが待つことはない。
私とて沙穂子さんが悲しむ姿は嫌だが、誰も幸せにならないと分かっているのに、その背中を押してあげることは出来ない。
入江は、理性の判断を優先させているが、感情を御し切れているとは思えない。
私がそうだったから、ではない。
勿論、それもあるが、御し切れているならば、沙穂子さんが不安に思うことなど何一つないからだ。
沙穂子さんに不安を与えた、その一つの事実だけで、お前が理性を上回る感情を無視しているというのが分かる。
無視する理由は、会社の為、ただそれだけだろう。
多くの人間の将来と自分自身の将来を計りにかけ、理性で選んだのだろうな。
お前は、私と同じで馬鹿だな。
相原さんの将来もお前と一緒にあるのに。
それが、お前にとってどれだけ重いことか。
気づいてないだろう、入江。
その重さがお前を支えていること。
その重さがなくなったら、お前は、実は全ての判断が狂うこと。
正直、お前は私に似ていて嫌いだ。
けれど、相原さんを助けたい。
助けてやろう、入江。
私に出来ることは、そう多くはないだろうが…。



「さて、どう切り崩すか」
あゆみは思考をまとめるようにつぶやいた。
前髪をかき上げ、自分の知っている範囲の情報を整理する。
高校の同級生ではあるが、現在お互い異なる会社での立場もある。
どう動かすかによっては、それこそ業務提携に解消など、倒産の致命打になりかねないことも想定しなければならない。
どうすべきか…。
「あの、先輩?」
思考は、篤志の声で一時中断となった。
視線を上げると、顔を覗き込む篤志の顔がある。
「俺、結構恥ずかしいんだけど。それに男の膝枕なんていいとは思えないし…」
「思考の整理にちょうどいいよ。あと、慣れてくれ」
「うー…」
まだ色々追いついていない篤志は、顔を真っ赤にして困惑する。
あゆみはその様に頬を緩ませ、ふと気づいた。
「なるほど、私がチャンスを作ればいいか」
今、こうしていられるのは、西が自分にチャンスを与えてくれたからだ。
会社の再建を託された自分が自由になれるよう、資金援助を提示し、憂いを断ってくれた。
ならば、自分も暗躍すればいい。
「まずは、きっかけを取り除くか」
あゆみは、瞳を細めた。
頭の中で情報を整理し、それを行うには何ら問題がないことを確認すると、ニヤリと頬を緩めた。



翌日。
雨の中、あゆみはまず最寄り駅まで篤志を迎えに行った。
篤志が傘を忘れた為であるが、今回の話に篤志が必要不可欠であるというのもあった。
驚く篤志に今から会ってほしい人物がいる旨、その事情を簡潔に説明し、一緒に来るよう言うと、やはり他人事とは思えなかったのだろう、篤志は二つ返事で了承した。
電車で一駅分の移動をし、特に迷うこともない道を歩いていると、前方一つの傘が見える。
二人分の人影があり、その人影が見知ったものであることから、あゆみは目を見張った。
これから訪れる人物、正確に言えばその息子のものだったからだ。
会話は聞こえないが、気づかれないよう注意深く距離をとり、歩いていく。
彼らが足を止めると、あゆみは篤志を制止しつつ、見守ることにした。
「篤志、どうやら当人が動いたようだ。少し、推移を見守ろう」
こくりと篤志は頷き、物陰から様子を伺う。
二人はどうやら、口論になっている。
感情的になっている琴子の泣き叫ぶ声が、雨の音を裂くように、ある程度離れた場所にいるここまで聞こえてくる。
やはり、追い詰められている。
飛び出していきそうな篤志の頭を引き寄せ、宥めるように撫でながら、あゆみは直樹の感情的な本音を聞いた。


「おまえは、おれが好きなんだよ!!」


絶対の自信と本音を口にしない琴子への苛立ちを含ませ、直樹はもう一度言う。
「おれ以外好きになれないんだよ」
頬が緩むのが分かる。
自分以外好きになれない、そう断言するということは、本人の自覚は別にしても自分以外好きになることなどあってはならないという明確な独占欲だ。それがどういう意味なのか…答えは簡単だ。
「言えるじゃないか、お前だって」
理性を上回る感情。
それは、与えてもらったもの。
捨てられなかったのだ、捨てられる筈がない。
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