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男の私、女のおれ1 

注意
このお話は、某所で投稿した「女のおれ、男の私」に登場してきたオリジナルキャラ視点の話になります。
「女のおれ、男の私」に展開は準拠しますが、こちらでなければ出てこないエピソードなどもあります。
先に「女のおれ、男の私」をお読みになることをお勧めします。
また、オリキャラ度がかなり上がっておりますので、閲覧に十分お気をつけ下さいませ。
子供の頃から何でも出来たから、何に対しても興味を持てず、また執着したことがなかった。
母の勧めで遠めの私立小から近くの私立である斗南中に入学したが、成績でクラスを振り分けるそのシステムに失望する。
くだらない。
成績の上下で人の優劣を決めることが。
また、そのことで優位に立った気でいる奴らを見ることが。
わざと成績を悪くして、F組に入ってやった。
そのことで随分教師からは要らない詮索を受けたが、無視し続けた。
F組は確かに気のいい連中が多かったが、卑屈すぎた。
成績に囚われすぎていて、面白くない。
仕方ないので、上のクラスに上がれるようテストではある程度書き込んだ。
そうして翌年B組に上がり、やはり教師からは要らない詮索を受けたし、カンニングの疑いまでかけられたが、目の前でテストを受けてやり、納得させた。
B組もA組ほどではないにせよ、優位の意識を持ったくだらない人間の集まりだった。
社会に出れば、そんなもので優劣は決まらない。
学力があるからといって、社会で成功するとは限らない。
馬鹿馬鹿しい。
くだらなく思ったので、テストはF組に落ちない程度に書き込んだ。
「分かりません」と言えば、大抵は納得した。
高校は、E組になった。
…計算通りだったが、やはりE組もF組程ではないにせよ、卑屈だった。
F組に落ちなければいい、そんな風潮が余計に私を苛立たせた。
AとかFとかBとかEとか…
本当にくだらない。
この学校のシステムが生み出しているのだろうが、その程度で人の優劣を決める器の小さい人間が日々生まれていると思うと、やはり日本の将来は暗いものだと思う。

そんな時だ。

祖母の親友の孫の勉強を見てほしいと祖母から頼まれた。
短大の理事長をしている祖母は、人として尊敬している人物でもある。
その祖母の頼みを断れず、私は引き受け、後悔した。
中学1年というその孫、沢森篤志は…天然で頭が悪かった。
本人は一生懸命なのだが、その一生懸命に努力がついてこない。
私が手を抜いても出来る運動も出来ないし、不器用でおっちょこちょいで早とちりで失敗ばかり。
よくまぁ、斗南中も彼を入学させたものだと感心したぐらい。
要領得ない話を感情豊かに話す篤志は、私とは違う。
苛々すると言うのが、まず最初に抱いた印象だった。
なのに、言うに事欠いて、篤志は翌年の春に私を好きだとほざいた。
「断る」で即答したのに、篤志は変わらず勉強を学びに来た。
勉強を学びつつ、私に熱心に好きだと言ってきた。
私は「懲りろ」とだけ返し、気持ちに応じることはなかった。


変化があったのは、高校3年の時だ。


私は高校に入ってからも成績を操作してクラスを渡り歩いていたので、逆に廊下で会ったら挨拶する程度の仲の同級生を他のクラスでも何人か作っていたので、その噂はすぐに耳に入ってきた。
F組の相原さんがA組の入江にラブレターを渡そうとして、突っ返されたというものだ。
相原さんのことはその時、よく知らなかったが、入江のことは中学1年で同じクラスだったので多少知っていた。
気に入らないというのが、私の彼に対する感想である。
何故女子が騒ぐのかがよく分からない私は、相原さんに同情した。
あんなのを好きになってしまったばかりに可哀想にと。
もうさっさと忘れてしまった方がいいと。
そう思っていた矢先、気が進まず授業をサボろうと人気のない校舎の裏側で昼寝をしていたところ、相原さんが入江に伴われてやってきた。
覗くことはしなかったが、会話は耳に入ってくる。
どうやら、何の因果か知らないが、地震で家が倒壊した相原さんは入江の家に親子で身を寄せているようだ。入江のお母様がお弁当を間違えたらしく、噂になりたくない入江は相原さんを連れ出し、交換することにしたらしい。
冷ややかな入江の言葉に相原さんが楽しそうに「スカートはいて育ったって言うし」などと切り返す。
証拠でも見せたらしい、入江が取り乱した声で叫んでいた。
あの男でも取り乱すことが…というより、そんな女装していた過去があったとはな。
私は笑いを噛み殺しながら聞いていた。
その後、相原さんは入江を脅し、勉強を教え、テストで100番以内にしてくれれば証拠(写真らしい)を返すと言い、入江も応じた。
二人が去った後、私はくすりと笑った。
「やるじゃん、相原さん」
私が相原さんに興味を持ったのは、それからだ。



相原さんを観察していたが、相原さんは本当に入江が好きなようだった。
他の女子と違うのは、感情豊かに入江へ気持ちを表現しているということか。
身の程を知らない、という陰口もあるようだが、私は逆に相原さんが気に入った。
よく彼女を見ていなければ分からないが、相原さんは他の女子とは違った。
入江のことが好きでも、入江に媚びてはいない。
欲が極端になく、好きと伝えられること、少しでも傍にいられることに喜びを感じているようだった。
無償の「好き」は、どれ程純粋なのだろう。
入江はその貴重さをまだ理解していないようだが…。
そこまで考えた私は、自分もまた理解していないことに気づいた。
私は、篤志の「好き」を2年も蹴散らしている。
だが、思い返せば、篤志は私に「好き」と言っても、篤志は無理やり事を及ぼうとはしなかった。
ただ、私を見て、「好き」と言い、嬉しそうに笑っていただけだ。
「………チッ」
女のすることではないと思うが、舌打ちせずにはいられなかった。
相原さんに興味を持ち、気に入ったことで、「篤志」という存在に改めて気づき、意識し始めた瞬間だった。



その後、相原さんは無事に100番に入ったようだ。
入江のことだ、写真はすぐに没収したに違いない。
見ていないが、確信している。



本を読みながら、そこまで思考していたが、あゆみは人の視線に気づいた。
今しがた、ついでで考えていた男のものだ。
自分を無視しなかったところを見ると、読んでいたものが何なのか気づいたらしい。
この本を何も必要とせずに読んでいるのがどういう意味か、分からない彼ではないだろう。
「何か用か、入江」
読みながら問いかけると、直樹はそんなつもりがなかったのだろう、「別に何も」と簡素な答えが返ってきた。予想通りの答えだ。読書の邪魔だから話しかけるなと言ってみれば、何も答えず場を離れようとする。その背中に言ってやった。
「ああ、そうそう、相原さん、100番に入ったじゃないか。良かったな。
勉強を教えた甲斐があったんじゃないのか?」
驚いたのだろう、振り返る気配がした。
顔を上げる気はなかったが、少なからぬ動揺は伝わってきた。
大したことでもないので種を明かすと、動揺は嫌悪に変わったらしく、空気が若干変わった。
あれだけ騒いでおいて、周囲に聞かれないとでも思っているのだろうか。
そう思うと、天才と言われる入江も案外可愛いものだと思ったが、言わないでおいた。
「しかし、相原さんも何でこんなのが好きなのか分からないや。
彼女、明るくて頑張り屋で可愛いのに、可哀想ったらない」
入江に対する嫌味でもあったが、それは自分に対する嫌味でもあった。
可愛いは別として、篤志は明るい性格をした、努力家ではある。
その篤志が、何でこんな自分が好きなのか解らないし、可哀想だとは思う。
少なくとも望みが高い恋ではないだろう。
「人の心配するより自分の心配したら?」
入江が冷ややかに切り返してきたので、本を読みながら冷ややかに応じた。
「お前も含め、馬鹿は嫌いだ」
「C組に言われてもね」
「C組、ね。そういうくだらない思考があるから、A組の連中は馬鹿だと言うんだが」
成績で決められたクラスで優劣を決める、それに踊らされる者、特にAとFは顕著で、何と愚かしいことか。
A組を馬鹿と断じたからか、直樹がすっと目を細めたが、そのまま続けてやった。
「まぁ、Bも似たようなものか。エリート意識が強すぎる。だからと言って、EとFは卑屈な奴が多くて馬鹿らしい。
CとDかな、人間的にまともなのが多いのって。
学校の成績ごときでくだらない。そんなもので一喜一憂する方がどうかしてる」
恐らく入江直樹という男は、この言葉の意味を正確に理解するだろう。
成績を操作して、クラスを渡り歩いた事実に気づくだろう。
そこであゆみはようやく顔を上げた。
直樹の顔は、言葉の意味を正確に理解した色を浮かべている。
「そーいうの、興味がないから」
社会に出れば何の役にも立たない学校の成績で1番を取る意味が解らない。
そういうのは、取りたい奴に任せておけばいい。
何の興味も執着もないのだ、成績に拘りはない。
本も読み終わり、今日は篤志に勉強を教える日でもある。
そろそろ帰らなければならない。あゆみは本を閉じ、席を立った。
特に会話を続けたいとも思わなかったし、直樹もそう思っているようではなかったので引き止められることもなかった。
だが、出口でふと思い出した。
言い残していることがあった。
「入江、しっかり繋ぎとめておくんだな。
彼女は、いい子だよ。
私が男なら放っておかない」


彼女の「好き」は無償で、純粋。
たった一つに情熱を傾けている。
私には出来ないこと、だからこそ羨ましく思い、憧れる。
男だったら、放っておかないだろう。
取り立てて何でも出来るが、何にもないように見えるお前は、その貴重さにいつ、気づくかな?


喉を軽く鳴らし、あゆみは図書室を出た。
後にあゆみが思い返す、人生の転機とは、この入江直樹との会話から始まったのである。
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